強豪校には、部活動にトレーナーが帯同していることは昨今では当たり前になりつつあります。
トレーナーを部活動の場に入ることで、怪我の予防だけでなく、トレーニング面の強化や栄養指導などのアドバイスにより、生徒たちのパフォーマンスアップに貢献することができます。
では、具体的にトレーナーとはどのようなことをしているのか。
どうやってトレーナーをつけることができるのか。
トレーナーをつけることが部活動においてどんなメリットがあるのか。
そのような疑問にお答えするため、今回は「学校部活動にトレーナーを帯同させることで、生徒や保護者、そして顧問にとってどのような影響があるのか」という点について、トレーナー目線でお伝えします。
Contents
1.部活動におけるトレーナーの役割
スポーツ現場におけるトレーナーの役割は様々あります。そのトレーナーはどんなことができるのか、その役割を図る一つのツールとして、トレーナー自身が取得している資格があります。トレーナーの資格といっても、国家資格に加え、民間資格を入れると数え切れないほど存在します。
国家資格の代表的なものですと、「理学療法士」「柔道整復師」「あんま・鍼灸師」。民間資格として協会が出している資格は、かなり多くの数が存在するので、こちらhttps://nextfrontiercorporation.com/personal-trainer-capacity/で詳しく説明している為、こちらをご参照ください。
1−1.スポーツ外傷・障害の予防
部活動などのスポーツにおける怪我では、二つに分けられます。
・スポーツ外傷=衝突などのアクシデントにおける怪我
・スポーツ障害=オーバーワークなどの疲労など蓄積されたのちに起こる怪我
トレーナーは、このような怪我の原因となる要因を把握して、予防・改善をしていく役割があります。
筋力不足による怪我だったら、筋力トレーニング。柔軟性不足による怪我だったら、ストレッチやウォーミングアップ・クールダウンの見直し。肥満傾向で体重管理が必要だったら、有酸素運動の導入や栄養指導。
このような提案やサポートをすることが可能になっています。
1−2.スポーツ現場における救急処置
もしも、練習中に目の前で生徒同士がぶつかってしまい、意識がなかったら。
痛みで起き上がることができなくなってしまったら。
あなたは正しい応急処置や対処をすることができますか?
部活動における緊急事態時には、医療の専門知識を持っている方は少ないです。このような際に正しい応急処置を行い、病院でその時の状況をしっかり伝えることができることで、保護者との信頼関係を構築することが可能となります。
1−3.アスレティックリハビリテーション
生徒が怪我をした後、スポーツ復帰をする為に必要なのがリハビリテーションです。リハビリテーションを怠ることで、怪我の痛みを引きずったまま部活動に復帰したり、動作や姿勢のクセが身についてしまい、後々大きな怪我に繋がることもあります。
このようなリハビリテーションの専門知識を兼ね備え、それを指導できるのもトレーナーの役割です。
1−4.コンディショニング
リハビリテーションを含め、生徒たちのスポーツパフォーマンス向上のために技術的な指導ではなく、身体的な指導をすることもトレーナーの役割です。
どうしたら、下半身を強化できるのか。足を速くするために・ジャンプ力を上げるために何をしたらいいのか。このような技術面ではなく身体に関するパフォーマンス向上を図ることを行います。
1−5.測定と評価
学校の行事として、体力測定が設けられいるかと思います。しかし、部活動における測定はより身体的な数字を測っていくものです。 その競技においてどのような能力が必要でどう測定を行なったらいいのか。
その測定結果を的確に説明し、トレーニングなどに応用する能力を兼ね備えています。
この測定とは、怪我の要因となりやすい関節の可動域測定や各部位の筋力測定なども含まれます。
1−6.健康管理と組織運営
生徒の健康管理という意味合いで、怪我の発生状況・救急処置や治療、リハビリの状況などを記録・管理することもトレーナーの役割です。
このような怪我に関する情報を分析し、予防に生かすのも必要なものとなります。
1−7.教育的指導
適切な栄養指導や減量・増量についてのアドバイスをしたり、怪我をした生徒に対してカウンセリングを行ったりすることも、競技面とは別の視点を持ったトレーナーの役割と言えます。
顧問には言いにくい悩みなども抱えてしまい、誰にも相談できないことで部活動に対して良い感情を抱けない生徒もいます。そのような生徒に対して、心理面でサポートできるのは、思春期である生徒にも良い影響だと言えます。
ただし、トレーナーや顧問に頼りきりにならないよう、自立した人間となるように教育することも、今後の生徒の人生に大きく関わります。依存させるのではなく、自立した人間育成をすることが大切となります。
2.トレーナーにもタイプがある!気をつけることとメリット・デメリット
部活動にトレーナーを入れることで、大切なことは「部活動に求めている役割と依頼をしようとしているトレーナーが求められていることを本当にできるのか」ということです。
トレーナーのタイプとは何か、ご説明いたします。
2−1.トレーナーのタイプとは?部活動に入れるために気をつけること
トレーナーを部活動につけることで大切なことは「トレーナーのタイプ」です。トレーナーが取得している資格や経歴によって、そのトレーナーのタイプがわかります。
大きく分けると、
ストレングス(トレーニング系)
アスレティックトレーナー系
メディカル(ストレッチなどのケア系)
という分類です。
今の部活動に必要なものはトレーニングかケアか、それとも応急処置や怪我予防なのか。どれを重視するかで、依頼するトレーナーも大きく変わってきます。
各トレーナーがどのようなタイプなのかを簡単に見分ける方法の一つとして「資格」があります。
しかし、資格はあくまで資格。そのトレーナーが本当にその役割をまっとうできるのかを見分ける指標の一つなので、依頼をする前にしっかり話し合うことは怠らず十分に意見をすり合わせることが必要となるので注意しましょう。
2−2.メリット
・怪我を未然に防ぐことできる
可動域の獲得や筋力強化によって、怪我の原因となる動きを改善して大きな怪我につながる前に防ぐことができます。トレーニングやコンディショニング、ウォーミングアップ・クールダウンもこれに含まれます。
・適切な栄養指導ができる
動きを速くしたい、もっと軽やかに跳べるようにしたいという時に、この生徒の体重が、脂肪がもう少し落としたら…と思うことありませんか?
そんな時に食事バランスや量を適切に指導し、生徒自身や保護者に対する説明をきちんとできることで、生徒達の自己管理能力が向上し、生徒自身の自立にもつながります。
・運動パフォーマンスの向上(競技力の向上)
ダッシュなどの心肺系強化、トレーニングによる筋力強化、切り返し動作などの俊敏性強化により、各競技に特化したパフォーマンスを向上させることができます。
・怪我をした選手への適切な応急処置で復帰を早める
怪我をしたり痛みがある選手に対して、適切な評価を行い、リハビリを実施することで、早期の競技復帰や更なる怪我の予防をすることができます。
・誤ったフォームの改善で、より高いパフォーマンスを発揮することができる
中には適切なリハビリを行わず競技復帰してしまい、痛みを抱えたまま続けている生徒もいるかと思います。そのような生徒に多く起こるのは「痛みを庇ってしまい、間違った動作が身についてしまうこと」です。
このようにして、どんどん動きが良くなくなってしまいます。フォームの改善に対して、アドバイスすることができるのもトレーナーの強みとも言えます。
・定期的な測定と評価で怪我の予防やパフォーマンス向上が見込める
学校で行われている身体測定や体力測定よりも、さらに競技に近づけた測定を行い、生徒たちがどのように筋力を上げているのか・スピードが速くなっているのかなどの測定が可能となります。また、関節の可動域や一部分の筋力を測定することで、より細かい身体測定ができます。
このような測定結果から、生徒達に必要な筋力や可動域などを評価して、怪我の予防や運動パフォーマンスを向上させることができます。
・顧問と生徒との間に入り、円滑に部活動が進むような仲介役ができる
時には顧問と生徒の間に隙間が空いてしまうこともあります。「意図が伝わらず、誤解を招いてしまった」「顧問である私の言うことを聞いてくれない」「生徒間で喧嘩になり、部活動内の空気が悪い」など、人間関係上様々な問題が発生します。
このような事態に仲介役として、能力を発揮するのがトレーナーです。第三者が仲介することでお互いの意図を共有することができ、より円滑に問題が解決します。
また、競技方針やチーム方針に対して大きく介入していないトレーナーだからこそ、生徒たちも本音を話しやすいと言われます。パフォーマンス向上だけでなく、コミュニケーションとしてもトレーナーの役割があります。
2−3.デメリット
・トレーナーを雇う費用
まず初めに降りかかる問題として、「トレーナーを雇う費用の確保」です。一番良い案は「学校側が負担してくれること」ですが、公立の学校だと難しい可能性が高いです。
そうなると、各部活動で費用を調達することとなりますが、部費をやりくりしている部活動にとって、遠征費や大会参加費などを除いた上でトレーナーへの帯同費用を支払う分が残っているのか。もし、なければ保護者の理解を経て生徒たちから徴収することとなります。
このように保護者からの理解や協力がなければ、顧問の自腹を切るということになります。他にも、テーピングなどの消耗品・トレーニング器具など経費もかかってくるので、そのような物品の経費をどのように負担するのかも、トレーナーと相談する部分になります。
・生徒や保護者との信頼を獲得
二つ目に「生徒や保護者との信頼を築くこと」です。学校に常駐している教員だからこそ、信頼を置いているという面もあるかと思います。
しかし、全くの外部からトレーナーを部活動に入れて、なおかつ生徒のカラダを預けることになります。教員からのしっかりとした説明をしなければ、保護者は納得しないでしょう。
・分業になるので、顧問との連携が難しい
そして、三つ目に「顧問とトレーナーとの連携」です。競技に対する指導とカラダに対する指導と、似通っているようで別の分野を指導することになります。両者の意見を明確にし、すり合わせをしなければ全く違う指導方針になりかねません。
顧問側は競技に対する指導のみで、トレーニングなどのカラダに関することは口出しをしない。トレーナー側もカラダに対する指導のみで、競技に関することは口出ししないというように、しっかりルールを決めておくと良いでしょう。
このように様々な問題点がありますが、資金・信頼性・連携がとれたら、部活動にトレーナーを介入させることは容易にできます。また部活動内の分業をすることが可能となるので、教員側の負担が大幅に減らすことができます。
生徒や保護者だけでなく、顧問の負担を減らすこともできるメリットがあるので、トレーナー介入はとても素晴らしいことです。
<コラム>
余談ですが、アメリカの学校にはトレーナーが一名常駐するように制定されています。これは、部活動で発生した怪我に対して適切な処置・対応ができることを学校側が安全面の対策として設けているのです。
何か怪我や事故が発生した場合、適切な処置ができる人材が常駐しているという信頼を得るためにも、トレーナーを部活動に介入させることが大きな意味を含んでいます。
3.まとめ
今回は部活動におけるトレーナーのメリットとデメリットについてお伝えしました。新たに外部から指導者が入ることになるので、生徒や保護者のケアをしつつ、生徒たちが心地よく部活動に励むことができる環境をしっかり作っていくことが大切になります。
顧問とトレーナーとの連携を高めつつ、どんなことが今の部活動に必要なものかしっかり明確にした上で、トレーナーを依頼することが一番の鍵になります。