ライザップをはじめとする高額パーソナルトレーニングジムの世間への認知が高まり、注目されつつある「パーソナルトレーナー」という職種。世間的には稼げる職業として注目を浴び始めました。2020年の東京オリンピック招致も追い風になり、これからますます多くのパーソナルトレーナーが増えることになるでしょう。その中でも特にこれからパーソナルトレーナーを目指そうとする人が気になるのが年収。
どんなに好きなことを仕事にしたいと思っていても生活ができなければ仕事にならないのが本音。ここではパーソナルトレーナーの年収について厚生労働省などが発表している数値と実際にトレーナーとして生計を立てている方のモデルケースをもとにパーソナルトレーナーの年収についてリアルにお伝えします。
Contents
1.やっぱり稼げる?パーソナルトレーナーの一般的な年収
結論から言うとパーソナルトレーナーの平均月収は約38万円といわれています。
内訳は
☆20代27万円
☆30代36万円
☆40代42万円
☆50代50万円となります。
単純計算すると還暦(60歳)まで仕事をしたときの生涯獲得賃金は約1億8千万円になります。
これだけ見るとそこそこ稼げているようにも見えます。
しかし、パーソナルトレーナーの多くは個人事業主なため、ボーナスなどは存在しません。さらに資格の有無やキャリア・成果などにより収入は大きく変動するため、厚生労働省などの発表をすべて鵜呑みにすることは避けた方がいいでしょう。
筆者の周りで活動していたトレーナーの方は、上は月収150万下は月収5万で活動していたのもまた事実です。
それだけに実力社会の職種であることは間違いないでしょう。
2.契約ごとで年収が変化!知っておきたい4つの契約形態
一般的な大枠の年収が分かったところで、ここからは収入に関わる契約形態をおさえましょう。大きく分けてトレーナーが収益を上げるために結ぶ契約形態は4つあります。それぞれの特徴とメリット・デメリットをここではお伝えします。
2-1.正社員としてトレーナーを行う場合
まずはフィットネスクラブやマイクロジムに正社員として入社するタイプです。扱いは雇用契約になり、一般的には会社員と同じように1日8時間労働を行いながら、パーソナルトレーニングを行います。
給与は固定の月給制で、賞与や昇給などによりキャリアと共に年収を増やしていけるのがメリットです。RIZAPのトレーナーもこの区分に入ります。
しかし、会社やジムによって形態は異なりますがパーソナルトレーニング以外にもスイムやスタジオなどを行う総合職を募集する場所が多いため、パーソナルトレーニングだけを行いたい方にとってはデメリットが多いかもしれません。
契約には、パーソナルトレーニングによるインセンティブが給与につかない形態もあるので、パーソナルトレーナーとして稼ごうと考えている方には合わない雇用形態です。
おおよそ手取り18~25万円が月収となります。年収としては216~300万円+賞与になります。
2-2.フィットネスクラブやマイクロジムと契約をする場合
現在活動しているパーソナルトレーナーの多くはこのタイプです。個人事業主としてフィットネスクラブやマイクロジムと契約を結び、その施設内でパーソナルトレーニングを行う契約形態です。
メリットとしてはフィットネスクラブに通う運動意識の高いお客様に対して営業をかけることができ、施設も契約しているので準備する必要がありません。
そのため少ない投資でトレーナー活動をすることができます。(契約金を払って活動するクラブもあります。)
デメリットは、クライアント様との契約が取れなければ収益が0円であること。収益の数十%をクラブなどに納めなければならないこと(契約形態で値段は変わりますが、一般的には売り上げの60~80%がトレーナーの収益になります。)。
セッション料金が一律で設定できないこと。営業など契約前の時間給が発生しないことなどがあります。
賃金のモデルイメージをシミュレーションすると、1時間当たりのセッション料金が税込み6480円で取り分70%1日5セッションを20日間行った場合、
6480×0.7×5×20=453,600円/月という計算になります。
年収にすると5,443,200円です。サラリーマンの平均年収が414万なので、このペースで稼ぐことができればある程度食べて行くのに不安はないでしょう。
2-3.クライアント様と直接契約するフリーの場合
フィットネスクラブなど特定のクラブとは契約せずにクライアント様個人と契約を結び、パーソナルトレーニングを行う契約形態です。この契約のメリットはクライアント様と直接契約ができるため、セッション料金が100%入ってくること。
セッション料金を自由に設定できること。契約クラブの営業時間に左右されず、早朝・深夜に関わらずクライアント様にあわせて仕事を行うことができる。
反対にデメリットとしては、クライアント様との契約が取れなければ収益が0円であること。営業など契約前の時間給が発生しないこと。クライアント様によってはセッション場所の提供を行う必要があることです。
賃金のモデルイメージをシミュレーションすると、1時間当たりのセッション料金が税込み9,720円で1日5セッションを20日間行った場合、
9720×5×20=972,000円/月-施設使用料という計算になります。年収にすると11,664,000円-施設使用料となります。
このくらいになってくると年収1千万円プレーヤーの仲間入りです。
2-4.マイクロジムの経営者になる場合
最後はマイクロジムなどを経営してジムのオーナーになる方法です。こちらは上記の3つの形態とは少し異なります。メリットは、自身の経営ジムなので、機材から営業時間まで幅広く自分で戦略を立てることができること。
登録トレーナーを募れば、自分がセッションを行っていないときでも施設使用料として収益を得ることができることがあります。
反対にデメリットは、初期投資がかかること。クライアント様の集客ができなければ継続することが難しいこと。セッション以外の事務仕事が増えることなどがあげられる。
収益モデルは無限大です。規模にもよりますが、月に数百万円ほどの利益が上がることもあるでしょう。
以上がパーソナルトレーナーの年収の大枠です。今回ご紹介したモデルケースはパーソナルトレーナーとして生計を立てている方のケースを参考数値として出しました。目標数値として設定するにはリアルで肉体的にも実現不可能な数値ではありません。ぜひ参考にしてみてください。
3.パーソナルトレーナーになるには│3つのモデルケース
パーソナルトレーナーの年収が詳しく分かったところで、実際にパーソナルトレーナーとして活動していくためにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは3つの方法についてここではお伝えします。
3-1.無資格で明日からトレーナーとして活動する
現在の日本のトレーナー活動は資格の有無にかかわらず行うことができます。そのため、「私はパーソナルトレーナーです。」と明日から名乗って活動することも不可能ではありません。
しかし、トレーナーはセッション中のクライアント様のカラダについて責任を持たなければなりません。
無資格で明日からトレーナーとして活動することは可能ではありますが、正しい知識を持ち合わせたうえで活動することが最低条件です。
3-2.現場で活動しながらひとり立ちしていく
先輩トレーナーやチームに帯同してトレーナー活動のキャリアをスタートし、経験と共に独立していくモデルです。
トレーナーを目指す学生などが、学生トレーナーやインターンとして実業団やクラブチーム、大学の部活に帯同するのが主な活動方法になります。
これは資格の有無にかかわらず行うことができるため、キャリアを上げていく中で自信を高めていきたい。勉強しながらキャリアを上げていきたい方のはおすすめな方法です。
しかし、チームなどに帯同するための入口は狭く入るためにはそれなりに人脈が必要となることが多く、その部分が難易度が高いといえるでしょう。
大学や専門学校に入学、もしくはすでに実業団チームとの業務提携を結んでいる会社に就職やインターンとして入っていくことが主流です。
3-3.資格試験に合格してトレーナーとして活動する
現在日本には多くのパーソナルトレーナー認定団体があります。定期的に認定試験を行っているところや年に数回など開催頻度は団体により異なりますが、その認定試験に合格してパーソナルトレーナーとしてデビューする方法です。
これにより所属団体より仕事の斡旋を受けることができたり、大手フィットネスクラブとの契約に必要な資格として認定されている団体もあるため、資格を取得してトレーナーとして活動していくことは仕事を獲得を優位に進める一つのツールとなります。
しかし、認定試験や資格の維持などに費用が掛かるため投資費用などを用意する必要があります。資格の種類や費用面でもう少し詳しく知りたい方は、当ブログパーソナルトレーナーを目指す方へ資格紹介と取得法徹底解説をご覧ください。
4.初期投資はいくら必要?
パーソナルトレーナーとして活動していくためにはどのくらいの費用が必要なのでしょうか。ここではパーソナルトレーナーとして活動のスタートラインに立つために必要な大まかな費用を見ていきます。
4-1.無資格でパーソナルトレーナーになるには
資格を特に取得せずにパーソナルトレーナーとして活動していくための必要最低限な初期投資はおおよそ3~5万円程度です。内訳としては
・ウエア 1~2万円
・保険 年間1~2万円
・解剖学などの学習書 1~2万円です。
トレーナーとして活動していくために必要最低限のものを準備するとなるとこのくらいの費用になります。活動していくためには必ずウエアは数枚必要ですし、クライアント様に納得して運動してもらうためには基礎知識は最低限必要です。
学習費の投資も最低限行いましょう。また、これからトレーナーとして活動していく方にとって疑問に思ったり抜けてしまいがちなのが、保険料です。
セッション中トレーナーの過失によりクライアント様にケガをさせてしまったとき、トレーナーはそれに対して責任を追わなければなりません。
正しい知識を持ち、細心の注意を払っていれば事故が起きることはあまりありませんが、もしもの時のために保険に加入しておくことをおすすめします。
筆者は経験がありませんが、トレーナー仲間に保険に加入していたために賠償できたという方がいらっしゃいました。特にフリーで活動していこうと考えている方にとって保険の加入は必至です。
4-2.資格を取ってトレーナーにためには
資格取得をしてトレーナーとして活動していくための必要最低限な初期投資は15~30万円程度です。内訳としては
・ウエア 1~2万円
・保険 年間1~2万円
・解剖学などの学習書 1~2万円
・資格取得費 10~20万円です。
資格取得には大きくわけて2つあり、それにより資格取得費に大きな差が出ます。
ひとつは、資格取得に必要なゼミなどの事前講習などを受けて本試験に臨む方法です。
試験費、合格後の協会認定登録費のほかに事前講習費などがかかりますが、講師やほかの受講生と一緒に座学・実技の基本学習をスクール形式に学び、トレーナー活動の基盤を整えた上で試験に挑み、資格を取得していく方法です。
現場での指導経験などがなく、これから新しくトレーナー活動を始めたい方にオススメの資格取得方法です。
もう1つは、一発試験で合格し資格を取得する方法です。これは試験費用と合格後の協会認定登録費のみで主に現場指導の経験があり、新しく活動範囲を広げていくために資格が必要な方にオススメな資格取得方法です。
資格によっては海外で取得するものもあり、それぞれの特徴をしっかりと調べたうえで資格取得を目指すことが必要です。
4-3.自分のジムを経営するためには
最後に自らジムの経営者になる場合に必要な初期投資は200万円~2000万円程度です。こちらに関しては初期投資額は経営する施設の規模により大きく変化していきます。
トレーニングマシンやウエイトラックなど1台数十万円になるだけでなく、重量の大きい資材などを使うため、床などの補修や施設管理費など初期投資のほかにもランニングコストがかかります。
将来自身でマイクロジムなどを経営したいと考えている方は、実際に現在経営者として活動している方にインタビューしてどのくらいの初期投資が必要か相談するとより明確になってくるでしょう。
5.知っておくと便利!手取り給与の見積もり額
パーソナルトレーナーで稼ぐ年収について、おおよその見方が上記でわかりました。ここでは、実際にこれからパーソナルトレーナーとして活動したい人に向けて、手取り収入事例をご紹介します。
実際に契約しているトレーナーのモデルもありますので、参考にしてください。
5−1.トレーナー・インストラクター両方をやっているケース
フィットネスクラブなどで活動しているパーソナルトレーナーの方で、スタジオレッスンを担当し、インストラクター業務と兼ねている方も多いです。そのような方のモデルケースをここではご紹介します。
曜日 | 業務内容 |
月 | パーソナル5本・レッスン1本 |
火 | パーソナル2本・レッスン3本 |
水 | パーソナル7本 |
木 | パーソナル4本・レッスン2本 |
金 | レッスン5本 |
土 | パーソナル2本 |
日 | 休み |
レッスン料金2500円
パーソナルセッション料金6480円(手取り75%)の場合。
1週間のレッスン料金 11本×2500円=27,500円
1週間のパーソナルセッション料金 20本×6480円×75%=97,200円
レッスン+パーソナルセッション=124,700円
1ヶ月でおおよそ、498,800円。単純計算ではこのくらいの値段になります。
さらに源泉徴収税額(10.21%)を引くと、447,873円が手取り額になります。
この人がセッション数、レッスン数を一年間継続すると、手取り額5,375,676円になります。
拘束時間は1週間で40時間強。一般のサラリーマンと同じ程度の労働時間での獲得賃金のモデルケースです。
5−2.フィットネスクラブと個人で契約している場合
フリーランスでフィットネスクラブと契約しながら、個人でクライアントさんを持つトレーナーのモデルケースです。
曜日 | 業務内容 |
月 | パーソナル5本(フィットネスクラブ) |
火 | パーソナル6本(個人) |
水 | パーソナル8本(フィットネスクラブ) |
木 | 休み |
金 | パーソナル3本(個人) |
土 | パーソナル2本(フィットネスクラブ) |
日 | パーソナル5本(個人) |
パーソナルセッション料金6480円(手取り75%)
個人セッション料金9720円の場合。
1週間のパーソナルセッション料金 15本×6480円×75%=72,900円
1週間の個人セッション料金 14本×9720円=136,080円
週間合計金額=208,980円
1ヶ月でおおよそ、835,920円。単純計算ではこのくらいの値段になります。
さらにフィットネスクラブとの契約内業務の源泉徴収税額(10.21%)を引くと、261,827円+個人分の税金を引いた金額が手取り額になります。
個人でのセッションの金額に関しては年末調整などで、源泉徴収税や所得税などの金額を納める必要があるので、収入に応じてこの数値は変動します。
5−3.アルバイトとパーソナルトレーナーの掛け持ちケース
学生トレーナーや駆け出しのトレーナーの場合、トレーナーとしての収入が安定するまでの間一時的にアルバイトと掛け持ちをする場合があります。筆者も収入が安定するまで、アルバイトと兼用している時期がありました。
曜日 | 業務内容 |
月 | アルバイト8時間 |
火 | アルバイト5時間 パーソナル2本 |
水 | パーソナル5本 |
木 | アルバイト8時間 |
金 | アルバイト5時間 パーソナル3本 |
土 | 休み |
日 | 休み |
パーソナルセッション料金6480円(手取り75%)
アルバイト時給1000円の場合。
1週間のパーソナルセッション料金 10本×6480円×75%=48,600円
1週間のアルバイト料金 26時間×1000円=26,000円
週間合計金額=74,600円
1ヶ月でおおよそ、298,400円。単純計算ではこのくらいの値段になります。
さらに所得に関わる税金などを収めた金額が手取り額になります。
以上3つのモデルケースをお伝えしました。収入の参考にぜひご活用ください。
6.まとめ
パーソナルトレーナーの一般的な年収は厚生労働省の発表ではほかの職業に比べて少し高い位置づけにされています。
しかし、トレーナーといっても多くの仕事の仕方、契約形態など様々な要因があるため収益の格差はある程度出てしまいます。
今回のモデルケースを参考に自分はどのくらい働いてどのくらいの対価を受け取ることができれば、満足いく年収にたどり着くかシミュレーションしてみましょう。
それをもとにトレーナーとしての事業計画を立てることがトレーナーとして活動していく原点になるでしょう。